JRの一筆書ききっぷを活用した旅を自分で計画して切符を買えるようになる!を目標に、途中下車などの基本ルールや運賃計算のポイント、割引特急券を活用したルートの考え方を5分でわかる記事でご紹介します。
「一筆書き切符」は、出発駅からあちこちの駅で寄り道しながら目的地の駅に向かう(またはぐるっと一周して出発駅に戻る)片道乗車券の通称です。
一筆書き切符を利用すると、いつもの旅行に少しの追加出費や時にはお得に小旅行を追加できます! また、青春18切符とは異なり、料金を払うと特急や新幹線も利用できるため、移動できる距離や快適度は段違いです。
一筆書き切符 | 青春18きっぷ | |
---|---|---|
利用可能期間 | 思い立ったらいつでも | 期間限定 |
新幹線・特急の利用 | 特急券の購入で可能 | 不可 (乗車券も特急券も必要) |
有効期間 | 連続した日数 日数は乗車券の距離で決まる |
連続した3日間か5日間 ※2024年冬から上記に改定 |
ルートの自由度 | 片道(一筆書き)経路 | 自由 |
途中下車 | 後戻りしなければ自由 | 自由 |
以降の話を分かりやすくするため、「乗車券(切符)」について少し解説します。
乗車券の本質は「A駅からB駅までを、指定した経路で運んでもらうための契約書」です。ここでのポイントは「指定した経路で」という点にあり、以下の例で説明します。
大阪から東京に電車で向かう際は、東海道新幹線利用の青ルート(切符①)が有力ですが、北陸新幹線で敦賀・金沢を経由して東京に向かう赤ルート(切符②)も存在します。
乗車券の値段は距離に比例して高くなるため、同じ目的地でも切符①と切符②は別物で値段も違い、切符①で北陸に行くことはできませんし、その逆もしかりです。
乗車券は距離に比例して高くなると紹介しましたが、「比例」の中にお得になるミソがあります。それは「ある距離から1キロ当たりの単価が安くなる」という性質を利用するという点で、言い換えると「長い距離の切符を作るほど割安になる」ということです。
比例とか単価とか数学っぽくなってきたので以下の例で説明します。
本州におけるJRの乗車券の値段は、距離が300キロまでは概ね比例関係で、距離が2倍になれば運賃も2倍になる関係です。実際は5キロや10キロごとに運賃が決まっていますが、単価は1キロ約16円(税抜)です。
300キロは具体的に東京~豊橋、大阪~浜松位の距離なので、残念ながら普段使いの距離では距離を伸ばしても安くはなりません。しかし、300キロを超えた距離からは1キロあたりの価格が安くなり、更に600キロを超えると半額以下の1キロ約7円まで安くなります[1]。
実際、東京~大阪(556キロ)の切符は8,910円ですが、東京~博多(1175キロ)では14,080円と、距離は2倍でも運賃は1.5倍程です。
この性質を使って、一筆書き切符では(300キロ以上の)できるだけ長い片道乗車券を作ることで、運賃を割安にするという点がポイントです。
「途中下車」とは「旅行途中の駅でいったん改札の外に出ること」で、要は寄り道です。実はJRの乗車券は原則、「後戻りしない限り何回でも途中下車できます」 [1]。
100キロ未満の乗車券などでは途中下車できないため普段使いでは意識することはないルールですが、一筆書ききっぷではこのルールを活用して経由地で寄り道するわけです。
出場時にも定期券のように改札機から切符が戻ってくるのは初めてだとユニークな光景かもしれません。もちろん有人改札で「途中下車したい」と伝えて出ることもできます。
ただ、一筆書き切符で1か月かけて旅行できるわけではなく、乗車券には「有効期間」があり、~100キロは1日、101~200キロは2日、以降200キロ毎に1日ずつ有効期間が増えます[1]。とはいえ、東京~大阪(556キロ)の乗車券であれば4日間、東京〜博多(1175キロ)であれば7日間使えるので、週末や連休に旅行するには十分な日数です。
ここまで乗車券の基本ルールとして「経路指定」「距離が長いほど割安」「途中下車」「有効期間」をご紹介しました。これを踏まえて実際に一筆書き切符の経路を考えてみましょう。
この先はウェブや紙の時刻表についている路線図があると便利です。
ルートを考える際の基本ルールは、「一度通った駅は2度通らない」「新幹線とJRの並行在来線は同じ路線とみなす」という2点です。
後者がややこしいため具体例だけ紹介すると、「東海道新幹線と東海道線」「東北新幹線と東北本線(宇都宮線)」は経路としては同じ路線とみなすため、例えば、新大阪から京都に新幹線で行き在来線に帰る経路は一筆とは扱わないというルールです。同様に、東京~大宮も要注意です。逆にいうと、東海道線の東京~大阪の切符を買えば、東海道新幹線に乗ることはOKとなります。
これを踏まえて、大阪~東京~大阪の一筆書き切符を考えてみます。先ほど例に出した金沢経由が有名な例です。
一筆書き切符では、新大阪→(東海道・湖西)→敦賀→(北陸新幹線)→東京→(東海道線)→山科(京都の隣駅)の切符①と、山科→新大阪の切符②を作ります(切符②は次に説明します)。この場合、切符①が14,410円、切符②が860円で運賃は15,270円と大阪~東京の往復乗車券より2,500円ほど安くなります。特急券を踏まえると少し割高になりますが、改めて旅行するより格安で金沢や途中の温泉地で降りて観光するプチ贅沢ができます。
先ほどの経路では、在来線で見ると山科駅で経路が重なっています。そのため一筆書き切符としては山科が打ち止め駅となりますが、少し重なったときは打ち止めの駅からもう一枚切符を作れば良いのです。切符①が1200キロ以上あり十分割安のため、切符②を追加してもトータルでは安くなるというロジックです。
また、ここでは「新幹線と並行在来線は同一とみなす」を利用し、東京~新大阪の東海道線を2枚の乗車券で隙間なく押さえているため、東京~新大阪で新幹線にも乗れます。
乗車券は乗るすべての区間が網羅されていれば分割しても基本的には問題ありません。
特急や新幹線に乗るためには、一筆書き切符と合わせて「特急券」が必要です。なお特急券は乗車券とは異なり、途中で降りる場合は必ず特急の降車駅で分割しての購入する必要がある(要は、1乗車につき1枚必要)ためご注意を。
(例:敦賀から北陸新幹線を使い、金沢で途中下車して東京に向かう場合、特急券は敦賀~金沢、金沢~東京の2枚が必要)
そのため、一筆書き切符のように距離を伸ばして安くすることはできませんが、JR各社のウェブ予約サービスが割安になりオススメです。具体的には、JR東日本区間はえきねっとの「チケットレス特急券」、JR西日本区間はe5489の「eチケットレス特急券」、JR東海区間はex予約の「e特急券」等があります。
また、ex予約とe5489の双方に登録が必要ですが、ex予約で東海道・山陽新幹線の切符を購入する条件で、旧乗継割引の特急券のように、京都・新大阪・新山口等で特急を乗り継ぐ割引特急券「乗継チケットレス特急券」や、米原乗り換えで敦賀までの割引特急券「乗継きっぷ」が購入できますので、旅行の経路によってはこちらもオススメです。
JRの会社境界の話が絡むため若干難易度が上がりますが、JRの会社間を跨がず、かつ片道1枚で完結する一筆書ききっぷの場合は、株主優待券を使って乗車券・特急券共に安く購入できる場合があります。
具体的には山陽・山陰エリア(JR西日本)、新潟・長野・熱海以東の東日本エリア(JR東日本)に完結する区間は狙い目です。会社境界は紙の時刻表には記載がありますので、慣れてきたらこの方法も検討してみてください。
ルールと切符のご紹介はここまでです。いかがでしたでしょうか? 興味があればぜひ紙の時刻表とにらめっこしながら一筆書き切符の旅を計画してみてください!
以下の記事では実践編として、窓口や券売機での一筆書き切符の買い方や、有名なモデルコースをいくつかご紹介します。※本記事で紹介したルールや価格は執筆時の情報を基に簡略化して紹介したものです。また、今後変更されることもありますので、実際に計画される際は各社の規則などを必ず確認してください。